被災地をニットで繋いで支援するプロジェクト「Think Of JAPAN While Knitting」のモチーフサーキットが、7/1(日)10:00-17:00、天神橋筋商店街の関西大学リサーチアトリエにて開催されました。このプロジェクトは、昨年の5月に立ち上げて、今年の3月31日で2011年度の決算をして、みなさんのモチーフを繋げて製作された作品の売上全額2,182,115円を「あしなが育英会」に寄付することができました。
例によって、HPはこちら。
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http://atricot.jp/tjwkなぜ「あしなが育英会」なのかというと、僕たちは、震災遺児の支援のために、このプロジェクトを続けているからです。
だから、このプロジェクトは、1年で、ワンクールをやり遂げて、はい終わり!というものではありません。
もちろん、震災遺児の支援だけでなく、東北の復興はまだまだ気の遠くなるような時間がかかるわけで、だからこそ一過性の支援活動で終わらせるつもりは、ないのですね。
そもそも、「Think Of JAPAN While Knitting」というプロジェクト名は、ニットしているあいだは被災地のことを想おう、という意味です。
少しの時間を定期的に持って、大好きなニットに手を動かして、被災地に長くかかわっていこう、というものです。
報道は日々少なくなり、僕たちもすっかり日常に戻り、震災のことなどどこかに押しやってしまう。そうしないと、人は生きていけないからね。
でも、被災地の状況は、相変わらず、しんどいよね。しんどいに決まってるよね。せめて、そのことは心に留めておこうと、そのために、僕らは、このプロジェクトを続けていきたいと思っています。
と、まじめなことを書いているけれども、このプロジェクトのいいところは、やっていてとても楽しい!ってところもあるのです。
ニット好きが集まって、好きなニットをやることが支援に繋がるという、そのことが、続けていく最大のモチベーションになっています。だから、全然、重たくならない。そこがね、すごくいいです。
こういう活動をしていて、僕は、自分たちは正しいことをしている、なんてこと、これっぽっちも思いません。
逆に、偽善だと思うこともありません。
ほんの少しでもいいから社会の役に立っていることを願って、でも同時に、僕らのやってることなんて社会全体のなかで見たらハナクソみたいなもん、というクールな思いも抱えて、それでも楽しいのだからきっと間違ってはなかろう!というところに着地させて、僕は、この活動を続けています。
仕事だっておんなじだ。注文があるかぎりは社会の役に立っているのだというプライドと、オレの替えなんていくらでもいる、いてもいなくてもおんなじだというクールさの両方を抱えて、僕は、いつも仕事をしてます。そんな思いを抱きながら、自分の居場所を、僕は見つけていくんです。
集まったモチーフを繋いで作品に仕上げてくれているニッターの方たちは、なぜ、飽きもせず、延々と繋いでくれるのか。それはもう、とりもなおさず、ニットが大好きだからです。大好きだから、次々と新しい繋ぎにチャレンジし、試行錯誤を繰り返し、そこに遊びを入れていきます。
時間の経過に抗うように、そこに、「楽しさ」を忍ばせていきます。自分なりの「物語」を織り込むことで、その時間を豊かなものにしようとする人が、たくさんいる。
このプロジェクトの素敵なところはたくさんあるのだけれども、この、「楽しさ」に重きを置いている人がたくさんいるところが、とっても素敵です。
メディアはね、もう、とっくに次の話題に食いついてます。
特に大阪は、市政に毎日爆弾が投下されているような状態だから、メディアを賑わせるネタには困らない状況なわけで、僕たちのことを伝えてくれるところは、めっきり減りました。
メディアは、熱だけだからね。楽しさには、興味を持っていないからね。
そんななか、梅田経済新聞さんが丁寧な告知記事を書いてくれ、それはYahoo!ニュースにも転載されました。
梅田経済新聞「モチーフを編んで被災地支援 - 関西大学リサーチアトリエでイベント」Yahoo!ニュース「モチーフを編んで被災地支援 - 関西大学リサーチアトリエでイベント」あと、読売新聞も。
さて、当日は、雨にも関わらず、約40人の方にお越しいただき、みんなでモチーフを編みました。
出足こそ鈍かったけれども、午後からはたくさんの方が集まってくれて、なんだかんだで会場がいっぱいになりましたですよ。
久しぶりの再会の方、昨年知り合って、今ではすっかり仲良しの方、いろいろです。
イベントのあいだじゅう、僕はUstをチェックしたりTweetしたり、写真を撮ったりと、あんまり余裕はなかったんだけれども、いろんなことを思い出してました。
昨年のこの場所からはじまったんだよなー、って。
あんときはまだ、なんもなかった。
海のものとも山のものともわからないプロジェクトにたくさんの人が集まってくれたのだけれども、でも、まだなんもかたちになっていなかったし、どこまでできるんだろうという不安は強く、でも同時に、こんだけの人が集まって上手くいかないはずがないという希望、いろんなものがないまぜになっていたのでした。
気負いもあったしね。
そこから1年を経て、今回はモチーフサーキットの会場に作品をバーンと展示することもできたし、昨年の記録集冊子を見ていただくこともできたし、モチーフを編むところからはじまるこのプロジェクトがどのような作業を経て、どのような人の手をわたっていくのか、ということをきちんと紹介することもできました。
Ustで作品紹介をすると同時に、作品の特徴や製作過程で留意したことなどを、繋ぎ隊の主力メンバーであるみかり〜んさんご自身の言葉で紹介していただくことができました。
Ustアーカイブに残してあるので、興味ある方はご覧あれ。
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また、みかり〜んさんには、このあと、繋ぎの実演もしていただいたのです。これもUstのアーカイブに残してあります。
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昨年のこの時期、かたちになっていなかったものを、今年のモチーフサーキットではキチンと提示することができる。その、提示したものの背後には豊かな物語がたくさんあって、その物語と今回のモチーフサーキットはもちろん地続きで繋がっていて、今この瞬間も新しい物語は物語られ、紡がれていくのだという、そんな連続性を見ることができたらいいなあ、と、そんなことを感じながら、僕は臨んでいました。
きっと、同窓会的な雰囲気になるのかな、お顔を知っている人がたくさん来て、それぞれの立場で、それぞれのペースでやれることをやっていて、そんな情報を交換する場になるのかな、なればいいなと、僕は思っていました。
久しぶりのあの人、今ではすっかり仲良くなっているあの人、いろんな人と再会して、ガハハ!と笑ったり、ニコッとしたりしていました。
でも、それだけじゃなかったですね。
新しい人も、たくさん来てくれました。
FBで仲良くなった人や、昨年は来れなかったけれども今年は都合をつけて来てくれた人、これまでの活動で知り合い、今回初めてモチーフサーキットに参加してくれた人、新たに活動を知って駆けつけてくれた人…、いろんな人が参加してくれて、ニットの話に花を咲かせ、まっさらで新しい物語が紡がれていく瞬間が、たくさんありました。
最後の最後に名乗り出てくれた方は、なんと北海道から来られた方でした。
そのことをもっと早くに言っていただけたらもっと楽しかっただろうけれども、そういう雰囲気をつくることができなかった僕たちこそが反省しないと、と、後悔も反省もあったのです。
今回も、震災や復興に関わるお話が聞きたくて、関大STEP与謝野先生を通じて、関大システム工学部の倉田純一先生にご講演「被災地理科教育支援 奮闘記」をお願いしました。
こちらもUstアーカイブからご覧いただけます。
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倉田先生は、子供の理科離れを防ぐために、小学校へ出向いて理科の出張講座をずっとされている先生です。
震災以降は、被災地に赴いて、理科の出張授業をされておられます。
恵まれている地元でやるよりも、今は被災地に行ってやらんのとアカンのちゃう?と、ボソッと漏らしたひとことは、発火点になるまでもなく、オレも!オレも!と、一瞬で話がまとまり、一瞬でチームが結成されたそうです。
このなかには、実験器具の運搬をいつも請け負っている日本通運のドライバーさんもいらっしゃいます。「震災直後から日通は動けてますよ。というか、僕、行きたいです」
そこから被災地の教育委員会とさまざまな調整が行われ、倉田チーム一行は、石巻市の小学校5校で、小学4年生、5年生、6年生に、理科の出張講座を行う巡業に出ます。
復興支援のために石巻市の宿泊施設に空きがなく、毎日、仙台と石巻市を片道2時間かけて往復したこと。
活動基地の拠点を石巻市の「イオン」に置いたこと。(昼飯確保、大切!)
対象小学校が使っている教科書の対応単元表を調べて、教科書に準拠した内容の授業を行ったこと。
細かな話はいろいろあるのですが、印象に残っているのは、
理科室は通常、校舎の1階に設置されることが多く、そのために、震災で全壊しており、実験器具もなにもなく、理科実験ができない現状があるということです。
実験をして、体験を経なければ、詰め込みだけの授業になり、それは理科離れの要因になります。そういうことを防ぎたかったのが、この企ての、狙いのひとつです。
実際に、被災地小学校で行われた理科の授業実験を、再現してもらいました。
腕の動きと筋肉の働きについて考え、知るための実験です。オシロスコープを使って、腕の動きと筋肉の働きがどのような関係になっているのかを、眼で見ることができます。こんなの、大人が見てもおもしろいですよ!
ただ、実験に際しては、児童たちのPSTDに配慮しなければならない。
たとえば、通常の模型では、骨格と模擬筋肉の模型を使うけれども、調査したところ、骨格の模型はNG!というところが多かったとのことです。そういう場合を想定して、骨格ではなく、腕のかたちをした模型をあらかじめ用意していったのは正解だったとか。
また、海に近い小学校の児童と山にある小学校の児童を比べた場合、PSTDの度合いは、山側の児童のほうが重いということもわかりました。
海側の児童は、直接、津波による被災を体験しています。翻って、山側の児童は、そのような被災をしていない。それなのに、山側の児童のほうがPSTDの症状は重症である場合が多い、と。
海側の児童は、直接の被災者だから、見たこと体験したこと以上の情報を持ちません。でも、山側の児童は、被災こそしなかったけれども、友だちや知り合いから多くの体験談を聞かされ、イメージが増幅してしまうのですね。結果、山側の児童が重いPSTDを発症してしまう…。
このようなお話は、マスコミからはなかなか伝わってこないですね。
こうやって、積極的に関わっておられる方のお話を聞くと、イメージが広がるし、また、支援を続けているのは自分たちだけではないという、当然のことを、あらためて認識することができます。
そんなこんなで、朝から夕方まで、10:00〜17:00までの7時間はあっという間に過ぎ、またここから進んでいくんだ、と、そんなことを思いながら、終わりを迎えていました。
そして心に残ったのは、やっぱり、笑顔。笑顔、笑顔、笑顔。
ほんの一部だけど、お裾分け☆
最終的な集計はまだ出ていないのだけれども、
今年最初のモチーフサーキットは、約40人の方にご参加いただき、約160枚のモチーフができました☆
次回のモチーフサーキットは、
9月12日(水)13:00-15:00梅田の大阪市北区社会福祉協議会 在宅サービスセンターにて開催です☆詳細はHPを→
http://atricot.jp/tjwk/そして、今年は、大ヒット御礼中のグラニーバッグの講習会も開催します。
会場は、
梅田の大阪市北区社会福祉協議会 在宅サービスセンターにて。こちらは、モチーフを使ってつくってもらったグラニーを持ってかえってもらうことで、材料費がそのまんま寄付に繋がります。
グラニー講習会は、2012.9.29日(土)10:00-12:00 13:00-15:00の2回です。
午前中から参加して、午後の時間を使って仕上げることもできますよ。
申し込み制なので、HPからお申し込みください。
http://atricot.jp/tjwk/今年最初のモチーフサーキットを無事に終えて、ささやかなお疲れさん会をやって、家に帰ったら、奇しくも大飯原発の再稼働。
そして、大飯原発前では、「NO NUKES」の大合唱。
この大合唱を、海外メディアはリアルタイムで一斉に大々的に報じているのに、日本の大手メディアは全スルーですよ。
ネットでの配信される大飯原発前の様子を見ながら、奇妙なパラレルワールドに生きていることを実感するしかなかった夜、この国は、バラバラに引き裂かれてしまっているのだなあ、と、苦い認識を受け入れていました。
この現象と僕たちTJWKのプロジェクトを軽々しく関連づけることは、絶対にあってはならないと思うのだけれども、それでも、この事実は、小さなトゲとなって、胸の裡に刺さってますね。
それでも僕は、楽しさを忘れずに、このプロジェクトに関わっていきたいと考えています。
そう、楽しい支援は、これからも続きます。