梅田の茶屋町あたりのタワー系のビル、ザ・タワーとかインターナショナル阪急とかMBSとかロフトとか、近代的なカッコいいビルが建ち並ぶすぐ近くに、なかなか威厳のあるお寺さんがあることは、じつはあまり知られていません。
新御堂筋からちょこっと東に入った、JRの高架のすぐ脇にあるんですけどね。
なかなかシブいお寺さんなのに、どーゆーわけかまったく注目されていません。
一応、いつも山門が閉まっているので拝観は許していないのかなと思っていたのだけれども、こないだ、前を通りがかったときに勝手口が開いていて、たのもー!と声をかけてみると、拝観いつでもオッケーですと☆
それだったらもっと早くに行けばよかった。。。
「源光寺」というお寺さんです。
所在地は豊崎だけど、中崎町のハズレと言ったほうが通りがいいような場所にあります。
ほらん、バックにインターナショナル阪急をしたがえた、素敵なロケーションに、このお寺さんはあるのですよ。
古いですよ。
聖武天皇の時代、
行基が活躍した時代ですから。天平時代ですわ。
行基というお坊さんは、奈良時代の田中角栄みたいなオッサン(ただし、カネ関係は清貧)で、仏教徒として全国に布教活動を続ける傍ら、心の救済のみならず、橋を架けたり、道路を造ったり…と、公共の役に立つ土木事業を無限にやった人ですな。
ちなみに、この時代のお坊さんは皆、公務員的な身分保障がなされていたのだけれども、行基さんはそっから抜けて、アウトローの私度僧です。
それなのに大掛かりな土木事業を信じられない件数やってきた人なので、集団を率いるリーダーシップがすごかったんでしょうな。
大阪市の北区だと、そんな行基さんの代表例として有名なのが、
浜の墓です。
浜の墓については、過去、エントリーしました。
↓
「「大坂七墓」のひとつ「浜の墓」にて、葬式仏教について考える」北区に残っているこの古い墓地は、ホンマに古くて、日本最初の三昧火坑(火葬場)が設置された場所でもあります。
さて、源光寺。
浜の墓に三昧火坑が設置されたのを機に、そのそばに精舎を草創し、土・木・石の三仏を造って安置するとなって、このお寺さんが建立されたのでした。
ご本尊は、
阿弥陀如来。未来へ誘ってくれる仏さんですな。ま、火葬場だからな。
行基の後見人的ポジションにあった聖武天皇が勅願して建立された、ということになっとります。
なので、太融寺よりも古いし、綱敷天神や露天神(お初天神)並に古い、北区随一の歴史を誇るお寺さんです。
そんときは、無本寺、と命名されたとのこと。
747年(天平19年)の創建。
これが、本堂。阿弥陀さんが祀られているので、阿弥陀堂ですね。
まあ、古い古いお寺さんですから、その後、どっかで廃れたりはします。栄枯盛衰ですからね。
復活するのは、1206年(建永元年)、法然上人が、立て直してはります。
法然さんが勝尾寺から四天王寺へ日想観の修業のために赴く途中、行基縁のお寺さんであるのにもかかわらず荒廃していたのを見るにつけ、再興に尽力したとのこと。
法然上人と言えば、日本仏教史上最高の天才と謳われ、彼が布教した念仏は国家によって禁止されたのにもかかわらずひろがり続けたほどなので、この荒廃したお寺さんが彼の目に留まったのはラッキーだったと思います。
やがて、復興。
法然は、
「源をはづねてぞ知るこの寺の 光あまねき法のともしび」
と詠み、法然教である浄土宗に改めることで面倒を見るわけですが、そのとき、源光寺とし、装いも新たにスタートしました。
なので、寺名から光源氏繋がりで、光源氏のモデルである源融の菩提寺である太融寺との関係を類推すると、まるっきりの見当ハズレになります。
現在も浄土宗のお寺さんなので、そっからこっちは、宗派替えはないようです。
では少し、お寺のなかを散策。
本堂の前にあるのは、仏塔。お釈迦さんのお墓で、五重塔なんかとおんなじ役割のもんです。遠くからでも拝めるように塔になっているのだけれども、このあたりだと周囲の建物のほうが高いです(笑)
バックにチラと見えるのは、MBS社屋です。
あと、このお寺さんには、どういうわけか石灯籠がたくさんあります。
石灯籠は…、わりとコレクターが跋扈する世界で、どういう基準かは知らないけれども、ピンキリの値段で取引されているといいます。たくさんあるし、このお寺さんの代々の住職さんの誰かがコレクターだったのかなと睨んでいるのですが、どーでしょうか?
灯籠に挟まれて、観音さんが鎮座しております。
こちらはお地蔵さんが前後に仲よく☆
左側には不動明王、右側には雲中菩薩という、個人的には初めて見る配置です。
この世界観は…、よくわかりません(笑)
ちなみにこのお地蔵さん、ちゃんと北を向いている、北向き地蔵です。間違って南向きに配置されているお地蔵さんが多いなか、これは正解☆
たぶん法然が再興した時代、このあたりは賑わったんだと思います。
参道であったろう「源光寺道」の碑がありました。
三十三度石も、お百度石とおなじ役割です。
立派な鐘楼もありました。
というかんじなのだけれども、と眞のど真ん中にあって、エアポケットみたいに静かで、かつ、由緒も威厳もある、端正なお寺さんです。
季節の花も、控えめだけれども要所要所に植えられていて、しかもちゃんと手入れされているので、居心地のいい空間です。
また機会があれば、行ってみます。
次は、お寺の方からお話を聞きたいですな。
源光寺(浄土宗知恩院派 清淨瑠璃山)
大阪市北区豊崎2-3-23
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