そもそものはじまりは、豊崎で、「たけうちうどん店」といううどん屋さんを知ったことに端を発するのでした。
讃岐うどんの店で、カウンターに10人強程度の小さな店なのですが、ここのうどんが、最強に美味い。きっと、大阪で一番美味いです。…や、よう知りませんが(笑)
麺がね、ツヤッツヤに光っていて、宝石みたいなうどんです。
鳥天ぶっかけが人気メニューでして、なんとフリットした鳥の天ぷら、というよりもかぎりなく唐揚げに近いハードな鳥の天ぷらが5個、どんぶりから飛び出さん勢いで、ゴロっと乗っかってます。はっきりいって、そこらへんで食べる鳥の唐揚げ定食とかコンビニで買う鳥の唐揚げ弁当に入ってるものよりも、量が多い(笑)
鳥天だけじゃなくて、麺の量も、どういうわけか半端ないです。
特盛りだと、3玉はあるんじゃなかろうか。並盛りでもいい加減多いですが、開店当初、あまりの量の多さにクレームがついて、並については、これでも量を減らした、とのこと。でも、特盛りは、ガッツリ食べる人用なので、量はそのまま。食べても食べても、麺が減っていく気がしません(笑)
美味いもんは大好きだけれども、どちらかというとグルマンにシンパシーを覚える僕としては、嬉しいかぎりなのです。美味いだけじゃなく、それを腹一杯食べられる! 幸せなことじゃないですか。
ソバ同様、うどんもまたノド越しで味わうといいますが、あれはきっと、食べものに感動を求めるのではなくて、快感を求める食べかたですな。と、思うのです。ノド越しで味わっているかどうかはともかくとして、実際のところ、たけうちのうどんを食べて得られるものは、感動ではなくて、快感です。心ではなくて、身体に、ものっすごいポジティブなものが浸透していきます。
それは、ハウスともチルアウトともアブストラクトとも違っていて、ドカン!と、ブレイクが入ったような、ごっきげんなリフが飛び込んできたような、鋭利な鋭利なジャックナイフ的快感。あーっ!って叫びたくなるような、拳を挙げたくなるような。あ、サッカー見てて、ロスタイムに決勝ゴールが生まれたときみたいな快感です。
ぶっかけのダシも鳥天も美味いけれども、麺がね、ここの麺を口にしたときの快感というのは、ちょっと麻薬的です。とてもドラッギーな麺。うどんの褒め言葉としては、およそ似つかわしくないけれども。
食べたくなるときは、朝からどうしても食べたくなる気分で、昼ゴハンもしくは晩ゴハンまで、一日中、今日はたけうちのうどん!ってお腹にして、かつがつその日をうっちゃります。これ、どう考えてもジャンキーの症状じゃないですか(笑)
で、もちろん自家製麺ですから、数にかぎりがあって、ほぼ間違いなく閉店定時までに売り切れ御免となるのですが、朝からお腹をうどん腹にしてチャリを飛ばしていそいそ駆けつけて、売り切れ御免の札が出ていた日には…。。。
えーっと、今回、書こうとしているのは、たけうちうどん店ではないのでした。
じつは、たけうちうどん店がある豊崎は、ラーメン店とうどん店が軒を連ねる、ちょっとした麺エリアになってまして、そのなかの4店が「豊崎麺ず倶楽部」というユニオンを結成して、合同でイベントをやったり、コラボを企画したりしてます。
たけうちうどん店に通うようになって、そうしたユニオンの存在を知ったのですがね。
で、その4店というのが、
讃岐うどんの「たけうちうどん店」。
やはり讃岐うどんの
「情熱うどん讃州」。
ラーメンの
「弥七」。
つけ麺の「麺や 輝」。
たけうちうどん店のあまりの美味さに、残りの3店もきっと美味いに違いないと睨んで、片っ端から順番に行きましたですよ。
結論。
つけ麺が好きではないということをさっ引いても、「麺や 輝」は、要らん。というか、なんの印象も残ってません。。。
「情熱うどん讃州」は、そこそこ美味い。そこそこ美味いけれども、幸か不幸か「たけうちうどん店」がすぐそばにあるために、このエリアにいて「たけうちうどん店」をスルーして「情熱うどん讃州」にいく理由はない。「たけうちうどん店」に売り切れ御免の札がかかっていたときのための、保険のような店。
で、
「弥七」。
ああ、やっと「弥七」にまで辿り着いた。でもまだ、厳密には本題ではないです(笑)
じつは、豊崎麺ず倶楽部の4店のなかで、「たけうちうどん店」と「弥七」には行列ができます。で、「弥七」の場合は、その行列が半端ない。
行列に並ぶのは大ッキライなので、出来るだけ行列ができていない時間を見計らっていきます。といって、行列がない=売り切れ、という憂き目に遭う確率も高いのだけれども、僕の場合、朝からうどん腹になることはあってもラーメン腹になることはないので、それはそれで諦めもつきます。
ま、行列はともかくとして、中に入って食券買って、待つこと数分。じつは「弥七」にもオレの大嫌いなつけ麺がメニューにあるのですが、それには目もくれずに、塩ラーメン。僕が好きなのは、どこに行っても、塩です、塩。
塩ラーメンがラーメンの基本だとか、塩ラーメンを食べればその店の実力のほどがわかるとか、そーゆー蘊蓄とはまったく関係なく、僕は、塩派ですねん。あ、チャーシューは多めに、ヘタがあればヘタも、煮玉子は必須、そのへんが、僕の基本ラインです。
「弥七」のは鶏ベースのスープで、こってり系です。
天下一品も大好きな僕としては、こってりは、嬉しいかぎりですわ。ただ、おなじこってりでも、「弥七」のスープは、クリーミーとでもいったほうがいいような、なんちゅーか、牛乳入れてるのか?ってかんじの、まろやかなスープです。色だけ見てると、もんのすごいこってり系なんですけどね。でも、食べてみると、案外とそうでもない。
あ、今、ふと思い出したけれども、むかし、家で、深夜に日清の塩ラーメンをつくって食べて、そんときに賞味期限が迫っていたので、ラーメンと一緒に牛乳を飲んでたんですが、塩ラーメンと牛乳って、最悪の組み合わせです。どっちも好きだけれども、組み合わせて一緒に胃袋に入れると、ゲロ吐きそうになります(笑)
閑話休題。
話がなかなか本題に辿り着かないうえに、すぐに横道に逸れる。。。
えーっと、「弥七」のスープの話をしているのでした。
見た目はかなりこってりなんだけれども、食してみるとクリーミーでまろやかな味わいで、完食しても胸焼けしたりとか、そーゆーのが全然ない。もちろん、上品で洗練されたというわけではないのだけれども、この、そこそこさ加減が、僕的にはかなりストライクです。
具もね、最後にバーナーで焼き焦げ付けて香ばしくしたチャーシューのヘタ、しゃきしゃきの白ネギ、タマネギのみじん切り、とろっとした煮玉子。どれもこれもまともな材料を真っ当に調理した、素敵な具です。
麺は、ちょい中太で、平べったい、もちもちっとした麺。細麺好きの僕なのですが、これはこれで好きです。というか、このスープにはこの麺があうと思いますわ。このスープで細麺だと、麺がスープに負けます。
さて、「弥七」のスープが見た目ほどこってりしているわけではない理由は、紫蘇が入っているからだと思うのですね。
細く細く針のように刻まれた紫蘇が、こってりのスープに、春の風のような爽やかさをもたらしています。これがね、どストライクでしたね☆
で、ラーメンというのは、美味いうどんがもたらしてくれる快感とは違って、じわっとくる感動をもたらしてくれる食べものですな。
激辛ラーメンとか食べないからわかんないけれども、ラーメンというのは、麺を食というよりもスープを食するほうに重きを置いているせいか、稲妻のような快感が身体を貫いていくうどんと違って、なにか、みっしりとしたものが身体に充填されていくような、そんなかんじです。
「弥七」のスープには、ほどよいこってり感と、おろしたてのシーツのような爽やかな涼風が吹くせいで、冬に向かいつつある秋に訪れた小春日和のような、ゆる〜い心地よさがあります。そんなに好きな感覚ではないけれども、安心できるような、癒されるような感覚がありますな。
で、ここからがやーっと本題ですが(笑)、その「弥七」のラーメンがですな、な、な、なんと、昨日、タバコを買いに立ち寄った梅田のサークルKに、カップラーメンとなって鎮座しているではないですか!
僕の好きな塩ラーメンじゃなくて、醤油ラーメン。なんで醤油ラーメンだけカップラーメン化されたのか知んないけれども、ともかくも、カップ麺になってます。
そーいや、有名店のラーメンがカップ麺化された例って、今までにもいろいろあったような気がするのですが、そもそも元のラーメン屋に行ったことがないところばっかりだったので、特に気にも留めてなかったのですが、自分がひいきにしているラーメン屋さんのメニューがカップ麺化されるって、なんか、ビミョ〜な気分ですな。。。。
買ってみました。
商品名、「大阪豊崎弥七 醤油ラーメン」。エースコックとサークルKサンクスと弥七のコラボですと。258円。ちょい高。
太いノンフライ麺(70g)で、鶏白湯をベースにした醤油スープ。粉末と液体スープの2種のスープが入っていて、熱湯で5分調理してから2種のスープを投入します。
出来上がってみると、こんなんです。
わりに美味そうですね。
でも、これがねえ。。
そりゃ、そこらへんのカップ麺よりは美味いですよ。そのぶん、ちょい高いし。
でもさ、やっぱ、所詮はカップ麺ですよ。
そこには、紫蘇の風味もなければ、小春日和も春の涼風もありません。まあ、お店で醤油ラーメンを食べたことがないから、本チャンの醤油ラーメンとこのカップ麺がどの程度かけ離れているのか知らないですけど、ついでにいえば本チャンのスープに紫蘇が入っているのかどうかも知んないですけど、でも、間違いなく、比較対照するようなシロモノではないことは、塩ラーメンひと筋でやってきた僕にもわかります。
どんだけ高級なカップ麺をつくったところで、所詮はカップ麺で、そこに「弥七」のラーメンが存在する意義が、まーったくわかりません。
豊崎麺ず倶楽部のコラボって、こういうことなのか?
そーいえば、カップ麺の蓋の裏には、こんなもんが印刷されてました。
去年だったかな、「弥七」は1ヶ月ほど、お店を閉めたことがありました。
そんときはお店の軒先に貼紙が出ていて、
「従業員が広島で独立して、新しい人員の補充が間に合わず、ご満足いただけるものを提供することが出来ないので、体制が整うまでお休みさせていただきます」
みたいな内容のことが書かれていたのでした。
つまり、
暖簾が信用で出来ていて、その信用を守っていくことがお店を繁盛させるための条件だということを、わかってらっしゃるお店なのです、「弥七」は。
そういうお店が、自社商品の廉価版とすら言えない、カップ麺を出す。
暖簾の信用を落とすだけじゃないですか。
なにを狙っているのか、見えません。
見えないけれども、見えないなりにつらつらと考えていると、思い当たることも、すこーしだけあります。
たとえば、上に書いた、独立した従業員さんは、「弥七」の味を、広島で再現していると言います。今、「弥七」のサイトからは削除されているけれども、独立された当初は、「弥七」の店主が、広島に行かれた際にはぜひ!と、案内&応援のページをアップしていました。
さらに、サイトには、なーんと、「弥七流ラーメンの作り方」なるページがあって、「弥七」のラーメンのレシピが公開されているのですね。
専売特許でも独占でもなんでもない、と、言わんばかりです。
現実には、レシピが公開されようが、大阪から遠く離れた広島で暖簾わけが行なわれようが、当の「弥七」の客足に影響するとは思えません。
でも、料理屋にとって、レシピは、最重要な経営資源のはずです。
それを惜しげもなく公開する気前のよさ!
少しだけ思うのは、その気前のよさと、今回のカップ麺発売は、どこか、地続きで繋がっているのかな、と、いうことです。
こうなってくると、暖簾とはなんなのか、ということを考えさせられますな。
ラーメン 弥七
大阪市北区豊崎3-4-8
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