お初天神通りの脇、北側のゴチャゴチャしたところ、あのあたりもまた大阪の色が濃く残っているディープな一角だと、僕は思っています。
で、北九州から天神橋筋商店街にやってきた人がいるのだけれども、天神橋筋商店街で繰り広げられる大阪マナー、見知らぬ人に気安く声かけたり、半額セールがはじまる直前の総菜売り場では誰もレジに向かわないとか、そーゆー大阪マナーに目を白黒させていたので、大阪って、もっと奥深いよ、ってことで、お初天神のそのお店に連れていったのでした。
そこは、お初天神通りの脇、北側のゴチャっとしたところのビルのさらに地下にある、老舗のホルモン&焼肉のお店なのでした。
『河童』ってお店。
変わっててね、ホルモンが売りとはいえ焼肉屋さんなので、最初は塩タンからといきたいところじゃないですか。でもね、このお店では、塩タンは最後に出てくるのです。
最初が、ホルモン。
このホルモンが一風変わっていて、カリカリになるまで、弱火で焼くんですね。
おかきを焼く要領で、裏と表をひっくり返したり、コンロの端にあるのと中央にあるのを入れ替えたり…、そんなことを10分繰り返すのです。
やがて、表面はカリッ、中はクニュっというホルモンができあがり、それはそれは絶品の一品ができあがるのですね。
これ、「河童」流です。女将さんが指南してくれはります。
このホルモンを食べたあと、ハラミだとかロースだとかミノだとかの皿が出てきて…、
その次の皿が、カルピ。もちろん、骨付き。
このカルピもまた焼きかたが独特で、タレに浸かっているのを網に置いて、まず2分、次に引っくり返して2分、そのあと、もっかいタレに戻して二度ヅケして、裏表を2分ずつ焼くのですよ。ほいで、カルピはホルモン同様、弱火でじっくりと。
しっとりとしたカルピができあがって、これまた美味いのですね。
塩タンなんて、このあとですよ。最後。
こういう独自ルールを設けていたり、食べかたにいろいろと注文をつけるお店って、ありますよね。
具体的に口に出さなくても、創作料理なんちゅーのも、その範疇に入れてもいいかもしれんです。
でもねー、僕、じつは、その手のお店がキライなのですよ。
なんかね、食べるもんくらいゴチャゴチャ言わずに、好きなように食べさせてくれよ!って、思うのですね。
はっきりいって、ウザい。
ところが、です。
そんな僕でも、この『河童』には、嬉々として行くのですよ。焼きかた指南も、毎回毎回必ず聞きますです。
なんでかなーと、考えたら、結局のところ、接客なのですね。
このお店のルールにしたがったり、いろいろと指南を受けるのが、まったく苦じゃないのですね。
べつに下からバカ丁寧に接してもらってるわけでもなければ、押し付けがましくもなくて、タンタンタンッとテンポがよくて、このあたりが大阪ならではかな、と。
そして、必要以上にベタベタとしてこないし、離れすぎてもいない。距離感がね、いいのですよ。
この、接客の距離感というのが僕にとってはとても大切で、経験に照らしてみて、年季の入った人でないと無理ですね。
今回は、最後、テールスープで〆。
これね、小なのですよ。や、テールスープの小というメニューはないのだけれども、たくさん食べたから、女将さんが気をきかせて、小にしてくれたのでした。
このあたりの気配りも、押しつけの対局のあると思うのですね。
お店のルールや流儀というものは、お客への気配りと表裏一体で、どちらに転ぶのかで、印象が変わりますね。気配りと感じさせる接客になるまで、やっぱ、相当な年期が必要なのだろうな、というのが、僕の考えですわ。
そんな接客で、かつ、絶品のもんを食べさせてくれる、河童名物のお多福さん、もとい、女将さんは、70歳オーバー。
そしておやっさんは、フランス料理出身でビシッとコック服を着こなし、このお店のもうひとつの名物である、素手での網交換の芸を見せてくれはります〜。
というわけで、B級モノを至高の域に高める、接客の妙がある。
大阪飲食の最深部って、そういうところにあるのだと、僕は思っています。
焼肉&ホルモン 河童大阪市北区曾根崎2-10-15 曽根崎センタービルB1F
tel. 06-6314-0246
16:00-23:00
第1・第3日休み
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