出が文学少年のパンク小僧なので、それなりに読書歴は長くてですね、いわゆる純文学というやつは、ほとんど総なめにしておりますです。全集とか、読みあさってたし。
最近は、というか、この10年以上はもっぱらノンフィクションばっかりですな。
だって、最近の小説で食指が動くのって、年に数冊しかないし。
ノンフィクションはね、知らない世界のことがたくさん書いてあるから、食指が動くのが多いのですよ。それでも、ヘタクソな文章に当たると、放り投げてしまいますが…。
なので、薬の効能書きでも、文章に味わいがあれば、読んでますわ、きっと(笑)
さて小説です。
純文学は、存在の意義だとか孤独だとかがテーマになっているものが多いので、そりゃ若かりしパンク小僧にはぴったりなのですが、そういうことが人生上の大きなテーマではなくなってしまった年齢に突入してしまうとですな、娯楽としての文学に向かっていくのですが、これがね、読むに耐えるものがなかなかなくて…。
お話がよくできていても、描写がヘタクソだったり、比喩がヘタクソだったり、要するに観察が浅いのが多くてですね、よくこんなものを恥ずかしげもなく世に出してるな、と。
人間を見る目が浅かったり、キャラ設定がいい加減だったり、時代考証が抜けていたり…。
鬼平犯科帳とかね、やっぱあのクラスのものでないと、そそりませぬ。
と思っていたところ、最近、いい本が出ているのを見つけて、繰り返し読んでいるのがあるんですよ。
井伏鱒二の
「駅前旅館」。
これ、新潮文庫から新装で出てまして、むかしの本ですから400円。安い!
井伏鱒二といえば原爆ものの『黒い雨』や教科書にも載ってる『山椒魚』が有名だけれども、これはノーマークでしたわ。
昭和30年代頃の東京・上野駅前の団体旅館が舞台でして、そこの番頭さんがね、宿屋家業の舞台裏をいろいろ語ってくれるのですよ。
業界の符牒にはじまって、お国によるお客の性質の違いから、呼び込みの手練手管、修学旅行生の扱い、美人女将を巡る番頭仲間の仁義と生態なんかがですね、勃発する珍騒動の傍らに織り込まれていて、非常に奥行き深い小説で、かつ、滅法おもしろい!
キャラとはお客さんのこと。
ガマ連れとは女連れ。
ハクイ玉は美人のこと。
お客の懐にカネがたんまりありそうなのは、桁深い。
カネのないのは、桁ハイ、もしくはオケラ。
一人客はピンコロ。
酒を飲むのはドジを引く。
食事をするかどうかは、ハクはいいのか?もしくはハクは出るのかい?
座敷はシキザ。
宿料はケタ。
料金の安いところはケタ落ち。
ご祝儀はバッタ。
言われてみると、なるほど〜ってのもあれば、解説されてもわからんものもありますが、こんな豆知識がですね、随所に出てきますわ〜。
オレが社会人になったころにはすでに駅前旅館は駆逐されていて、ほぼすべてが味気ないビジネスホテルになってしまっていたけれども、たま〜に、ありましたね。
泊まったことも、何度かあります。
しっかりした日本家屋で、瓦葺きの二階建てで、玄関のガラス戸が広く開けてあって、左に下駄箱があって、右にはオモトの鉢なんかがあって、正面の大黒柱には大きな振り子時計があるような…。
板間が引き戸で仕切ってあって、カレンダーの下に金庫や小机が並んでいて、見かけはさほどでなくても奥がやたらと深くて、廊下が2度3度折れ曲がっていて、 あちこちに階段が口を開けていて、猫の額のような中庭越しに二階の手すりが見えて、そこにずらりと手ぬぐいが干してあって、迷路さながらで…。
そういう、王国のような場所でですな、井伏鱒二が取材しまくったであろう宿屋家業の番頭さんの生態がこれでもかと盛り込まれ、それを横糸にして、縦に珍騒動が繰り広げられていくという、小説。
涙と笑いとペーソスと酒と女と男と色恋と色恋のバカバカしさと仁義とあれやこれやの入り交じった人情話がね、しんみりほっこりしていて、よろしいのですよ〜。
なんか、少し苦い良薬を飲んだような気分です。
ちょっと寅さんチックなところがあって、こいつを下敷きにしたらいい喜劇ができるのになあ、なんて思っていたら、むかーし、映画化されていたことがわかりました。
主演、森繁久彌(笑)
いかにも、です。
フランキー堺とか伴淳三郎とか、達者な俳優さんが脇を固めて、マドンナ役に淡島千景…。
なんか、『駅前シリーズ』とかって、シリーズ物になってますな。DVD、出てるのかな? 見たいな。
今、3回目の再読に入ってます。
えーっと、前置きが長くなったけれども、小説の話を書きたいわけではないのでした。
天満にね、JR天満駅前、関西テレビの真正面に、不思議でレトロなホテルがありますねん。
「ホテル ダイキ」。
えーっとね、日本家屋ではないので旅館でないのはたしかだけれども、ビジネスホテルというには、外見上の清潔感がなさすぎるというか、関テレの対面という表舞台にあるくせに、漂わせてる雰囲気が連れ込み宿のそれなのですよ(笑)
でも、看板にはビジネスホテルと書かれてますね…。
料金もね、メチャクチャ安いです。
シングル 4,000円〜。
ツイン 6,000円〜。
トリプル 9,000円〜。
泊まったことはないんだけれども、1階のロビー(というほどのもんではない)に喫茶店があるんで、そこでお茶したことはあります。
そんときも、なかなかの体験だったな。
席に座ったら、ホテルのフロントからお声がかかって、ご注文は?と、フロントから聞かれ(テーブルまで来ないんだ。笑)、ホット!ってフロントに向かって応えたら、お会計はこちらになりますー!と、これまたフロントから叫ばれ、フロントまでカネを払いに行かねばならないという…。
というか、食券はないんだけれども、前金なんですよ。
ほいで、たしか250円くらいだったんだけど、1000円札を渡すと、釣りがない、と(笑)
もう、自販機でタバコ買って、小銭つくって、キッチリのおカネ渡すと、フロントのおねえさんが、コーヒーメーカーで1杯だてのコーヒーをつくりはじめるという…。
さらにさらに、無事にコーヒーが運ばれてきて、テーブルで飲んでるとですな、どこからやってきたのか猫がオレの足許をゆるゆる歩いておりましてですな、ひょいとオレの膝にのっかってましたわ…。
もうね、繰り広げられている風景が、完璧に旅館のそれなのですよ(笑)
誰が泊まるねん!って思ってたら、コーヒーを飲んでるあいだ、数組のお客さんが来てはりました。
口コミサイトがあったので、以下、そっからのコメントを転載しときます。
これ読んでると、この宿の雰囲気がわかるかと。
コメント読んでると…、いや〜すごいわっ!
口コミサイトのコメント関西テレビの番組観戦に当選したので前日乗り込みで宿泊。 JR環状線天満駅、日本一長い天神橋商店街に近くリアルな大阪の下町を感じることが出来る。 下世話で猥雑なれど、親しみやすく良心的な味と価格とサービスを提供してくれる町…そんな中にある無国籍的で昭和の香りのする、いい意味での“安ホテ ル”。 勘違いして頂きたいのは、このホテルは安っぽいのではない。 安くて、安心できる「旧き、善き」アジアの純真を感じることが出来る空間..
1月23日に家族4人で宿泊しました。子供二人は幼児なので布団なしプランでしたが、ホテルの御好意で布団を用意していただきました。有難うございました ^^ 今回の滞在は基本的に【安価&寝れれば良し】がテーマでしたので、部屋の古さなどは気になりませんでしたが、風呂のお湯が出なかったのが残念でした。た だ、近くに味のある銭湯があったので子供たちも珍しがって喜んでくれた為、不満という事ではないです。 評価としては再度利用する気持ちが在るか否かといえば...【在る】ということです。 追伸 非常口を開けたら線路があったのが面白かったです。音、振動に納得..
部屋は広く快適でしたが、トイレを使用したとき、水が長い間流れていて怖かったです。止まらないのでは・・..
立派なレトロ・ビジネス・ホテルです。 タイル貼りのトイレと浴室、畳敷き和室の寝室、靴を脱いで2階へあがるシステム、東南アジアっぽい1階のカフェ・・・。興味の無いヒトには只の古臭いホテ ルかもしれませんが、こういった雰囲気が好きな方には堪らないと思います。 部屋や設備は古いですが、掃除は行き届いていますしアメニティはこのクラスのホテルにしてはきめ細かい心遣いがかんじられますし(メイク落とし洗顔フォー ム、手洗い液体ソープ、ファブリース)、空気清浄機なんかもあって至れり尽くせり。 また泊まりた..
昭和のテイストたっぷりのホテルでした。今回は安価でツインを探したので、備等の古さ等については納得の上で宿泊しました。 部屋に備えてあるタオルがフェイスタオルは1枚も無く、バスタオル1枚しかなかったためフロントにお願いして食事のため外出しました。戻ってみると新たに バスタオルとフェイスタオルがそれぞれ1枚づつ置かれていました。2名で宿泊をするのに人数分用意がされませんでした。(部屋着は4着ありました) 宿泊客がチェックインする前に備品の確認はされないのでしょうか? また朝食をお願いしましたが、正直なところ金額に見合う内容ではないように感じました。 JRの駅は隣接しており地下鉄からもすぐ近くで立地は大変良い..
昭和にタイムスリップしたようなお部屋でした。 トイレは和式、お風呂はタイル貼りで臭いがしましたが… (使ってる最中は臭いが無かったので排水口が原因でしょうか) あと電車の音が頻繁によく聞こえました。 シングルとは言え、大人一人・小学生一人・添い寝幼児一人でもゆったりと広く。 従業員さんは添い寝でのベッドの広さを心配して下さいましたが、セミダブルなので全く問題ありませんでした。 それからアメニティの質の良さを感じました。 トイレットペーパーの紙が柔らかいし、シャンプーリンスを使ったら髪がとてもツルツルに。 どちらの物なのでしょうか? 是非購入して使いたいなぁと思いました。 そして、大阪ならでは(?)の複数のアメちゃん常備! 子供たちがとても喜んでました。 あと清掃がかなり行き届いていました。 駅や商店街の近くにあり、コンビニのお隣りでもあると言うこともあってか、持ち込んだ飲食物のゴミは持って帰るよう促されましたが、絶好の立地・広さ・価 格からしたら従うのが筋だと思い、不満はありません。
これはやっぱり、一回は泊まっとかんとアカンなー。
ホテル ダイキ大阪市北区天神橋4-5-9
tel. 06-6351-0168
チェックイン 15:00-24:00
チェックアウト 11:00
シングル 4,000円〜
HP
http://www.hotel-daiki.com/→
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